マダニを介して感染する「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)」の日本における年間患者数が、2025年9月30日時点で2013年以降の最多記録を更新しました。SFTSの感染地域は、西日本から東日本へと広がっています。2025年7月に秋田県、8月には北海道で初めての感染例が報告されました。SFTSは人間だけでなく、ペットの犬や猫にも感染することが分かっています。実際、茨城県では、犬および猫の感染が判明しています。
そこで本記事では、マダニ感染症が増えている背景、SFTSの概要と感染経路、ペットのマダニ対策について、ご説明したいと思います。
マダニは、寄生性のダニであって、動物から血を吸い取ります。動物の体表に寄生して吸血することにより、成長して繁殖します。
シカやイノシシ、野ウサギなどの野生動物が出没する環境に多く生息しています。そのほか、民家の裏山や裏庭、畑やあぜ道などにも生息しています。
人間、野生動物以外に、猫や散歩中の犬からも吸血します。ウイルスや細菌などの病原体を保有しているため、吸血する際に、動物に病原体を感染させます。
マダニ感染症が急増している背景には、気候変動や土地開発などによる影響があると考えられます。
具体的には、記録的猛暑や宅地開発などにより、野生動物の生息場所付近のエサが激減。野生動物がエサを求めて、本来いるはずのない市街地まで出没する。民家の周囲や畑、草むら、雑草が茂る道路脇など、さまざまな場所を訪れてはマダニを落としていく。その結果、マダニが人間社会と接触する機会が増え、マダニ感染症が広がった、というわけです。
SFTSは「重症熱性血小板減少症候群」の略称であって、マダニが媒介するウイルス感染症です。2011年に、中国で初めて報告されました。日本では、2013年以降のデータによれば、毎年100名程度の感染者が報告され、そのうち10%~20%が亡くなっているとのことです。
SFTSの潜伏期間は、6日間~14日間とされています。
人間での症状は、発熱や下痢、おう吐などです。重症化して、死に至ることもあります。致死率は10%~30%であって、高齢になるほど患者が多く、致死率も高くなります。
マダニの活動が活発になる4月~10月に、発症例が多く報告されています。ただし、冬季の感染も確認されています。
本記事の脱稿時点では、宮城県において感染例は報告されていません。しかしながら、主にSFTSウイルスを媒介する種類のマダニは宮城県にも生息していることから、県内でのSFTSによる感染リスクはあると考えられます。
SFTSへの感染は、人間だけではありません。
日本では、犬・猫、チーターのSFTS発症が報告されています。
SFTSは、人から人への感染のほか、動物から人への感染も確認されています。発症動物から感染した飼い主の方や獣医療従事者の報告が、年間数例あります。
動物から人へは、感染した犬や猫の血液や排せつ物などとの接触によって感染します。三重県では、SFTSに感染した猫を治療した獣医師が感染後に亡くなっています。
猫が感染すると、人間と同様に発熱、白血球減少や血小板減少などの症状が認められます。猫では症状が重くなることが報告され、致死率も62.5%と非常に高くなっています。猫での発症は、3月から5月にかけて多くなっていますが、冬季にも比較的多く発生していますので、注意が必要です。
犬においても、症状は猫や人間と同様です。発症して動物病院の診察を受けた犬の40%が、亡くなっています。犬での発症は、4月と5月に多く、冬季は少ない傾向にあります。
前述しましたとおり、SFTSは、人から人への感染のほか、動物から人へ感染するため、ペットのマダニ対策も重要です。
ペットは近年、室内飼いが多くなっていることから、舗装された歩道を散歩させるだけではマダニに遭遇する可能性は高くはありません。
マダニの寄生や感染症が問題となるのは、屋外で散歩させるなどする場合です。
ペットは、衣服を着ることなく、草むらなどに入っていくことに加え、毛にマダニが付着しやすいため、人間と比べてマダニに寄生されやすくなります。自然が豊かな地域だけでなく、都市部にも緑地や公園などはありますので、油断は禁物です。
犬・猫の場合、屋外から帰ってきたら、ブラッシングをするなどして、体表にマダニが付着していないかを確認するようにしましょう。最大限まで吸血(飽血)したマダニは豆粒くらいの大きさですので、肉眼でも比較的簡単に見つけられます。
マダニを無理に取り除こうとすると、犬・猫の皮膚の中にマダニの口(口器)が残ってしまう可能性があります。また、押しつぶしてしまうと、マダニの体液が犬・猫の体内に入ってウイルスに感染してしまいます。
SFTSウイルスに対する承認されたワクチンは、本記事の脱稿時点では上市されていません。
SFTSに限らず、マダニは他の病原体も媒介します。
マダニを発見したら、マダニがついたままの状態で、早めに動物病院において適切な処置を受けるようにしましょう。
仙台市泉区の「いずみペット霊苑」では、犬・猫をはじめとするペットの火葬から、納骨、供養まで、スタッフ一同、心を込めてサポートいたします。毎年3月と10月には、合同慰霊祭を開催して、多くの方々に参加いただいています。
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前回の記事『特許から見えてくるペットフードの傾向【前編】|どんな企業の特許があるの?』(https://www.izumi-pet.com/pet_information/2025/09/29/)では、ペットフードに関する日本に出願(申請)された特許を分析した結果として、出願件数の推移、出願件数の多い企業の傾向を紹介しました。
今回の後編では、ペットフード関連特許の技術領域の傾向、ペットフード関連特許の例を紹介していきます。
近年、ペットは「家族の一員」としての地位が確立されています。ペットによりおいしく、より健康に良い食事を与えたいという飼い主の方が増え、食事にも人間と同等の品質や安全性を求める傾向が強まっています。
こうしたペットに対する健康志向の高まりは、特許にも表れています。
2013年から2023年に日本に出願されたペットフードに関する特許について、それらに付けられた分類コードに基づき、「技術領域」および「解決する課題」別に整理しました。その結果、以下の「技術領域」に属するか、「解決する課題」がある特許が多く見られました。
※2013年~2023年の出願の中から、注目すべきものを抜粋しました。1件の出願に複数の分類コードが付けられている場合があります。
● 健康の増進または維持:440件
● 嗜好(しこう)性の向上:295件
● ペプチドやタンパク質などの添加:276件
● 植物抽出物の添加による栄養改善:196件
● 微生物またはその抽出物の添加:154件
近年、ペットフードは、ペットの健康状態別(例えば、猫の腎臓の健康維持や免疫ケア)など、商品の細分化や多様化が進んでいます。それもあってなのでしょう。メーカー各社からは、「健康の増進または維持」に関する技術を導入した特許が多く出願されています。
そもそも健康に良いフードといっても、ペット自ら進んで食べてくれることが前提です。「健康の増進または維持」に関する技術を導入する以外に、「嗜好性の向上」という課題の解決も大事です。高品質な素材を使用するなど、ペットにとってのおいしさを追求した商品の需要も高まっています。このようなことなどを背景に、「嗜好性の向上」という課題を解消するための特許出願が多くなっていると考えられます。
自然派素材を訴求した商品も、人気が高くなっています。「植物抽出物の添加による栄養改善」に関する特許が相当数出願されているのは、そのような背景と何か関係がありそうですね。
他方で、「微生物またはその抽出物の添加」に関する技術を導入している特許も、無視できません。最近では、異常な腸内細菌叢(そう)の状態を正常にすることを目的として、プロバイオティクスを含むペットフードやサプリメントが注目されています。「プロバイオティクス」とは、適量を摂取したときに、腸内細菌のバランスを改善することで、健康に有益な働きをする生きた微生物をいいます。
なお、特許の内容は、出願から1年6か月後に公開されます。今回の分析時点(2025年8月)では、2024年以降に出願された特許の一部は公開されていません。そのため、分析対象は、2023年出願分までとしています。
最後に、ペットフード関連特許の例を3つご紹介します。メーカー各社の得意分野が、特許上でも映し出されているのが分かる気がします。
●「肥満リスク低減用ペットフード及びペットの肥満リスク低減方法」 ユニ・チャーム(特許第6334845号)
水溶性繊維および不溶性繊維を特定の割合で含む、健常な猫に与える中性脂肪吸収抑制用のペットフード。
●「腎機能を向上させるための方法及び組成物」 ヒルズ・ペット・ニュートリション(特許第6602416号)
腎機能の向上が必要な犬に与えるペットフード。L-カルニチン、エイコサペンタエン酸(EPA)およびドコサヘキサエン酸(DHA)を含む。
●「ペットフード及びペットフードの製造方法」 いなば食品(特許第6383758号)
ささみ肉を主成分としたペースト状の食材を中空円筒状に形成し、その内部空間に、マグロ肉またはささみ肉を主成分としたゼリー状の食材を詰め込んだ棒状のペットフード。
ここまで2回にわたり、ペットフードに関する日本に出願された特許を分析した結果を紹介してきました。
このたびの分析は、2013年から2023年までの出願分までの特許を対象としています。
特許は出願から公開まで1年半のタイムラグがあるため、リアルタイムの情報が反映されているわけではありません。
2024年以降に出願された特許は、2023年までに出願されたものとは違った傾向を示す可能性もあります。
このブログでは引き続き、ペットフードやペット用品、ペット火葬・納骨・供養を含むペット関連サービスなどの動向を注視しつつ、ペットに関する耳寄りな情報を皆さまにお届けしていきたいと思います。
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