メーカーが新製品を開発する場合、開発初期の段階で特許を出願(申請)することが多くなっています。出願された特許の内容は通常1年半後に、インターネットを通じて無料で一般公開されます。論文や学会発表とは異なり、特許情報は誰でも見られるのです。特許を見れば、ニュースリリースなどからよりも相当に早く新製品開発の兆候を知れます。
ペットフードに関する特許も、各社から相当の数が出願されています。そこで本ブログでは、2回にわたって、ペットフード(主に、犬・猫用)に関する日本に出願された特許を分析した結果として、出願件数の推移、出願件数の多い企業、技術領域などの傾向をご紹介します。
まず、ペットフードに関する特許が、どのような企業から出願されているのかを知るために、2013年から2023年までの日本の特許出願を分析してみました。
以下に、ペットフードに関する日本特許の出願件数が多い上位10社を示します。
(※2013年~2023年の出願)
○ 1位 ネスレ(スイス):191件
○ 2位 ユニ・チャーム:142件
○ 3位 マース インコーポレイテッド(米国):114件
○ 4位 ヒルズ・ペット・ニュートリション(米国):99件
● 5位 花王:・32件
● 6位 DSM(オランダ):24件
● 7位 雪印メグミルク:22件
● 8位 ニップン:15件
● 9位 ペットライン:14件
● 9位 小林製薬:14件
ペットフードに関する日本特許の出願件数が多い企業は、ネスレ(スイス)、ユニ・チャーム、マース インコーポレイテッド(米国)、そしてヒルズ・ペット・ニュートリション(米国)の4社です。これらの企業は、日本におけるペットフード市場のシェア上位を占める企業(主要プレイヤー)と見事に一致します。出願数上位4社の特色は、次のとおりです。
○ ネスレ(スイス)
世界最大の食品・飲料企業。事業は多岐にわたり、コーヒー・飲料、菓子、調味料、ペットフード、栄養補助食品など、生活のあらゆる場面に関わる製品を製造・販売している。チョコレート菓子「キットカット」や、コーヒー「ネスカフェ」は、世界中で愛されている。近年、カプセル式のコーヒーメーカー「ネスプレッソ」も人気を博している。
ペットフードは、日本において、ネスレ日本から、「ピュリナ ワン」、「モンプチ」、「フィリックス」などの商品が販売されている。
○ ユニ・チャーム
生理用品、紙おむつ(ベビー用・大人用)、ペットケア用品において、日本国内トップシェアを誇る。祖業は、建材の製造・販売。生理用品の「ソフィ」、介護用品の「ライフリー」、ベビー用紙おむつの「ムーニー」などのブランドを世界中で展開している。海外売上高の比率が6割を超える。
犬・猫用ペットフードのブランドには、「銀のスプーン」、「ベストバランス」、「愛犬元気」、「All Well」などがある。また、犬・猫用排せつケア用品として、「デオトイレ」、「デオシート」、「マナーウェア」などのブランドの商品が販売されている。
○ マース インコーポレイテッド(米国)
数々の強力なブランドを擁する、世界有数の食品会社。事業の主な柱は、「菓子・食品」と「ペットケア」である。
菓子・食品事業については、チョコレート菓子の「スニッカーズ」や「M&M’s」が日本の消費者にもおなじみ。
もう一方のペットケア事業は、世界最大級の規模を誇る。ドッグフードからキャットフード、デンタルケア製品まで幅広く展開。日本でも、マース ジャパン リミテッドから、「ペディグリー」、「カルカン」、「シーザー」、「シーバ」などのブランドのペットフードが販売され、消費者に広く浸透している。
○ ヒルズ・ペット・ニュートリション(米国)
科学的根拠に基づいたペットフードを製造・販売する、ペットの臨床栄養学における世界的リーダー企業。日用品大手のコルゲート・パルモリーブ社の傘下に入っている。
「米国の獣医師が推奨するNo.1ブランド」であることを強みとして、専門家からの厚い信頼がブランドの根幹を支えている。製品は主に、健康なペット向けの「総合栄養食」と、特定の健康課題を持つペット向けの「特別療法食」のカテゴリーに分けられる。主力ブランドは、総合栄養食では「サイエンス・ダイエット」、特別療法食では「プリスクリプション・ダイエット」。日本では、日本ヒルズ・コルゲートから、ペットショップやホームセンター、動物病院などで販売されている。
ペットフードの日本市場の主要プレイヤーのうち、ユニ・チャームは、特許出願数が多いだけでなく、他社と比べて登録率(特許庁の審査合格率)が高くなっています。同社の特許は、質の面でも他社を圧倒しています。
これは、ユニ・チャームが自社の商品を守るために、特許をはじめとする知的財産を積極的に活用している結果の表れであると考えられます。例えば、プレミアム商品では、新技術の特許を取得することで他社の模倣を防ぎ、商品の差別化を図っています。同社は、知的財産に対する意識が高い企業です。
なお、特許の内容は、出願から1年6か月後に公開されます。今回の分析時点(2025年8月)では、2024年以降に出願された特許の一部は公開されていません。そのため、分析対象は、2023年出願分までとしています。
次に、2013年から2023年のペットフードに関する特許出願件数の推移を見ますと、出願件数は、2019年の204件をピークに、減少傾向にあります。2023年の出願件数は、ピーク時の約3分の1となっています。
これに対して、ペットフードの国内市場は、矢野経済研究所が実施した調査(https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/3906)などにもあるとおり、2020年以降も拡大し続けています。
データを見る限り、ペットフードに関する特許出願数の減少と、ペットフード市場の拡大とは、矛盾しているようにも思えます。
日本のペットフード市場が拡大を続ける一方で、ペットフードに関する特許出願の件数が減少傾向にあるのは、どうしてなのでしょうか。
2020年以降、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックにより、ペットフードメーカーも他の多くの企業と同様に、影響を受けました。
加えて、2022年から2023年にかけて、国際情勢の不安定化により原材料・資材関連費や、物流関連費・人件費などが高騰したり、円安が進行したりした結果、企業の収益が圧迫されました。企業内でコスト削減に努めるものの、それだけでは、利益や品質の確保に限界がありました。
そこで、企業では、即時の利益につながりにくい基礎研究や、成果が出るまでに時間がかかる新規技術開発への投資を抑制すると同時に、短期的な製品改良やマーケティング活動にリソースを集中させる傾向が強まったと考えられます。
2020年から2023年までの間に特許出願数が減少をたどった一因には、ここまで書いてきたような背景があるのではないでしょうか。
もっとも、ペットフード関連の特許出願数の減少は、業界の衰退を示すものではありません。経済環境の変化などに対応するため、メーカー各社が特許の数ではなく、質を重視していることの表れであるとも分析できます。
次回は、ペットフード関連特許の技術領域の傾向、ペットフード関連特許の例をご紹介したいと思います。
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伊達政宗は、「独眼竜」という異名があるほかに、「筆まめ戦国大名」や「筆武将」とも呼ばれ、直筆の手紙は、現存するものだけでも1000通を超えます。数ある手紙の中に、猫に触れたものが1通だけ、島根県立古代出雲歴史博物館に残されています。それは、江戸幕府と政宗との連絡係を務めていた幕臣・野々村四郎右衛門(ののむらしろうえもん)に出された、子猫をもらったことに対する礼状でした。そんな手紙が残っているとは……。
そこで本記事では、手紙の中で政宗が贈られた猫をべた褒めしていることや、猫を贈った野々村の逸話、島根県の博物館が政宗の手紙を所蔵する理由などをご紹介したいと思います。
政宗本人が連絡係の野々村に宛てた手紙には、猫をもらった喜びと感謝がつづられています。その内容は、次のとおりです。
「猫の子をお忘れにならずにお贈りいただきました。まず、男ぶりがなんとまあ、見事です。家来から、自分の体よりも大きいネズミを組み討ちに仕留めた、と聞きました。ますます大事に飼おうと思います。首輪もおしゃれで、一段と華やかです。直接お会いしてお礼を申し上げたいと思います」
手紙の内容から、政宗のほうから所望した猫であることが分かります。
猛将というイメージがある政宗も、「男ぶり(顔つき)がりりしい」と、猫をべた褒めです。
また、政宗は、猫が着けている首輪のことまで褒めています。猫をもらって、よほどうれしかったことが伝わってきます。
“イケメン”の猫を抱いてにやけている独眼竜。この手紙からは、私たちが思い描く政宗像とはほど遠い一面が見えてきます。
手紙に書かれた「組み討ちに仕留めた」とは、見事に捕まえたという意味です。まるで、戦場で敵方の兵士を討ち取ったかのように表現しています。
この表現について、歴史作家の桐野作人(きりのさくじん)氏は、近著『猫の日本史 : 猫と日本人がつむいだ千年のものがたり』の中で、「政宗がまだ戦国の気風を濃厚に残していることを感じさせる」と述べています。
手紙の内容からは、雄の子猫という以外に、どのような種類、色・柄の猫だったかは分からないのが残念です。しかしながら、自分の体よりも大きいネズミにもひるまず捕らえてしまうほどですから、勇ましくて強い雄猫だったと考えられます。
手紙には年月日の記載はなく、いつ書かれたのかは不明です。島根県立古代出雲歴史博物館によれば、使用時期によって形態が変わる「花押(かおう)」と呼ばれる署名の形態から推測して、政宗が50歳を過ぎ、大坂の陣(1614年~1615年)も終わった1620年~1621年ごろに書かれたものではないかとのことです。戦乱が終わった後、老いてもなお、政宗は戦国武将としての気質を持ち続けていたのでしょう。けれども、平穏な世の中では、政宗も武勇を持て余して、平凡な暮らしをしていたのかもしれません。そうしたこともあって、“武将モード”のスイッチが入り、「組み討ちに仕留めた」という表現がつい出てしまったのではないでしょうか。
ところで、政宗に猫を贈った野々村四郎右衛門とは、一体どんな人物だったのでしょうか。
野々村四郎右衛門は、江戸幕府の旗本であって、幕府と伊達家との取次(連絡係)を務めていた人物です。政宗は参勤交代により江戸にある屋敷にたびたび滞在したことから、野々村は、政宗とは個人的に親しい間柄でした。
手紙の中で政宗は、野々村に「直接お会いしてお礼を申し上げたいと思います」と、最大限の感謝の意を表しています。当時、幕府と連絡を取る際、大名自身が直接、連絡係の幕臣と言葉を交わすことはほとんどなく、通常は伝達役の家来が対応していたといいます。それだけに、あの伊達政宗が、猫を贈ってもらったことに対して、直接会ってお礼したいくらい感謝するとは驚きです。
野々村四郎右衛門には、面白い逸話があります。
野々村は、1600年の関ケ原の戦いに、徳川家康の近臣として参戦していました。戦場での経験があまりなかった野々村は、あろうことか、自分の馬を家康の馬にぶつけてしまいます。怒った家康は、刀を抜いて切り払ったため、これに驚いた野々村は、その場から走り去ってしまいました。軽率で不注意な振る舞いをしでかした野々村でしたが、その後、不思議にも(?)何のおとがめも受けなかったそうです。とにかく生き延びた野々村は、政宗の連絡係を務めることとなって、そのおかげで政宗は猫をもらえた、と考えられなくもありません。
記事の最後になってから書き出すのも少々気が引けるのですが、なぜ、仙台藩初代藩主・政宗の手紙が島根県の博物館に所蔵されているのでしょうか。
島根県立古代出雲歴史博物館によれば、政宗の手紙は、松江藩出身であって、美術品・古文書収集家だった桑原羊次郎(1868年‐1955年)という人物が所有していたものとのことです。桑原が亡くなった後、昭和40年代に入って、島根県が彼の遺品を譲り受けた際、その中に政宗の手紙も含まれていましたが、そのまま長年保管されました。
桑原家は代々、松江藩の両替商を務めた豪商でした。参勤交代により江戸に滞在した藩士が、桑原家へのお土産として錦絵を買って帰ることが多かったなど、桑原家には昔から美術品が集まってきたようです。桑原羊次郎は特に古文書の研究に熱心だったため、国内各地の資料を収集していました。そうした流れで、仙台市周辺からも書状を入手する機会があったと考えられます。
なお、桑原は、文化人としての功績が認められ、島根県文化功労者、松江市名誉市民にもなりました。
猫を見て「かわいい」と感じる心は、時代が移ろい、人々の暮らしが変わっても、きっと同じ。そんな気がしました。
仙台市泉区の「いずみペット霊苑」では、犬・猫をはじめとするペットの火葬から、納骨、供養まで、スタッフ一同、心を込めてサポートいたします。毎年3月と10月には、合同慰霊祭を開催して、多くの方々に参加いただいています。
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【参考文献】
〇 桐野作人, 吉門裕. 猫の日本史 : 猫と日本人がつむいだ千年のものがたり. 増補改訂版, 戎光祥出版, 2024.
〇 渋谷申博. 猫の日本史 : みんな猫が好きだった. 出版芸術社, 2022, (出版芸術ライブラリー ; 017).
〇 吉野仁士. “「独眼竜」が猫にデレデレ? 書状が伝える意外すぎる武将の一面(Sデジオリジナル記事)”. 山陰中央新報. 2022-02-06, 山陰中央新報デジタル.
https://www.sanin-chuo.co.jp/articles/-/159624, (参照 2025-09-15).