かつて、多くの小学校では、ウサギやニワトリを飼育していました。しかし、いま、全国の教育現場から動物たちが消えつつあります。
今回は、動物を飼っている学校が減っている背景と理由、学校で動物を飼う意義などについて、書いてみたいと思います。
大阪府教育委員会の調査によれば、ウサギやニワトリなどを飼育する小学校は2007年度には80%近くありましたが、2022年度には20%あまりにまで大きく減少したとのことです。こうした傾向は、大阪だけでなく、全国の小学校でみられると予想されます。
「動物を飼っている」という小学校でも実際は、メダカなどの魚類は飼育していても、ウサギやニワトリは1匹もいない所も増えています。メダカなどの魚類を飼育している理由としては、生活科の時間にメダカの発生に関する授業があることなどが考えられます。
では、なぜ小学校から飼育動物が減ったのでしょうか。
有識者による調査では、学校飼育動物が減った理由として、
● 長期休暇中の世話、病気やけがの処置など、教員の負担が多いこと
● 鳥インフルエンザの発生により、鳥類の飼育が避けられるようになったこと
● 動物愛護や動物福祉の観点から、学校での飼育は適していない、という意見が出てきたこと
● 動物アレルギーがあるため飼育活動に関われない児童に配慮する必要が増えたこと
などを挙げています。
これらのうち、最も大きい理由は、教員の負担の多さです。
「ゆとり教育」の見直しに伴い授業時間が増えたほか、いじめ問題への対応、発達障害のある児童への支援、家庭の事情を抱えるヤングケアラーへの目配りなど、特別な配慮を必要とする児童への個別対応の重要性が高まっています。こうした状況が、教員の仕事量を押し上げる要因となっています。
最近では、夏休みなどの長期休暇中の世話は、児童を登校させずに、教職員が当番で実施するケースが多くなってきています。自宅に動物を連れて帰り世話していたという教員の方もいます。
特に若い先生の中には、動物を飼育したことがない方も多くなっています。動物を飼育したことがない方が飼育担当になった場合、負担はなおさらです。
教員の仕事量を削減する試みとして、ある自治体では、学校行事運営の効率化や家庭訪問の形式見直しに加え、小学校での動物飼育を段階的に縮小することにしました。その結果、動物を飼う小学校は、4割ほど減ったそうです。教員が児童たちと向き合う時間や、教材研究の時間を確保することも、ねらいだったようです。こうした方策によって、「過労死ライン」に達する長時間勤務を強いられることも少なくなかった小学校教員の勤務時間は、短縮できたのでしょうか。
学校での指導のルールを定めた、文部科学省の学習指導要領には、小学校の生活科の動物飼育に関する規定に、こんなことが書かれています。以下に、引用します。
「動物を飼ったり植物を育てたりする活動を通して、それらの育つ場所、変化や成長の様子に関心をもって働きかけることができ、それらは生命をもっていることや成長していることに気付くとともに、生き物への親しみをもち、大切にしようとする。」
これについては、同規定の中でさらに、「2学年間にわたって取り扱うものとし、動物や植物への関わり方が深まるよう継続的な飼育、栽培を行うようにする」配慮を求めています。要するに、学校動物飼育は、ちょっとの間、動物を飼っておしまいにするのではなく、継続的に飼育する必要があるということです。
また、文部科学省が公開している『学校における望ましい動物飼育のあり方』によれば、学校飼育動物との関わりによって児童には、次のような効果が期待できるとのことです。
● 動物の命の大切さなどを実感することで、心が安らぎ、豊かな感情、好奇心、思考力や表現力などを培う
● 動物に触れて親しみ、世話を続けるなかで、自分以外の相手を思いやる心を育む
● ものの見方、考え方や感じ方を豊かにする
● 命あるものに対するいたわりや思いやりの心を育む
● 飼育活動を通して責任感を育む
…など
仮想世界の技術発展が目覚ましい時代だからこそ、実際に存在する動物とのリアルな触れ合いが大事になります。
動物に対して親しみを持ち、生命の尊さを実感したり、生物の習性や生命活動の仕組みを学んだりするために、学校での継続的な動物飼育には、現在でも変わらず、意義があります。
教員の負担を減らして学校動物飼育を続けていくために、各地の学校や団体では、さまざまな取り組みを始めています。
東京都大田区のある小学校では、長期休暇中に、校内で飼育しているモルモットを児童の自宅に預けて世話してもらう“ホームステイ”を実施しています。この取り組みにより、飼育担当の教員の負担が減ります。モルモットを預かる側の児童の保護者も、先生が忙しいのは理解していて、手伝えることはぜひしてあげたい、という思いがあるようです。
また、愛知県獣医師会では、2020年から、動物病院で飼育するモルモットを期間限定で(1か月間から1年間)学校に貸し出す“ホスティング”を始めています。飼育に必要なえさやケージ、病気やけがをしたときの診療費用はすべて、獣医師会が負担。さらに、貸出期間を経て、学校側がモルモットの継続飼育を希望すれば、無償で譲渡します。過去に、数匹のモルモットが学校に譲渡されました。
教員のすることが増えている現在、学校だけで動物を十分に世話していくのは難しくなっています。学校で動物を所有すること自体が、教員の精神的な負担になる、という指摘もあります。それならば、いっそ学校で動物を飼育するのをやめてしまえばよいのかというと、それも違うでしょう。学校動物飼育による情操教育効果は、認められています。学校動物飼育そのものを否定する人も少ないと思います。学校動物飼育は、簡単にやめられる性質のものではありません。時代の変化に応じて見直す時期が、いま来ているのです。
学校動物飼育の今後のあり方について建設的に考えていくと、学校動物飼育は学校だけでなく、関係者と共に取り組んでいく必要があります。保護者が子どもと一緒に世話することで対応したり、動物に関する専門知識を持つ獣医師ら専門家の支援を仰いだり、地域の人たちを巻き込んで協力してもらったりする。そうすることで、雲の切れ間から、学校動物飼育の持続可能性を指し示す一筋の光が差し込んでくるのではないでしょうか。
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