伊達政宗の命を受け、スペインおよびイタリアに使節として派遣されたことで知られる、仙台藩士・支倉常長。日本史の教科書にも登場する人物です。「慶長遣欧使節(けいちょうけんおうしせつ)」を率いた支倉常長は、日本人で初めてチョコレートを味わったとされています。
今回は、支倉常長にまつわる興味深いエピソードや、常長をもとに誕生したゆるキャラ、常長のお墓を紹介します。
支倉常長らの慶長遣欧使節は、1613年(慶長18年)に、牡鹿郡(現在の石巻市)月の浦を出航。太平洋を渡りスペイン領メキシコを経由して、さらにメキシコから大西洋を横断しスペインに上陸しました。1615年(元和元年)にマドリードで、スペイン国王に謁見(えっけん)。そこで、常長は外交交渉に臨むとともに、教会で洗礼を受けます。次いで、イタリアのローマを訪れ、ローマ教皇の謁見にも成功します。
メキシコは、カカオの原産地です。スペインにおいても、16世紀にはチョコレートが伝わっていました。したがって、常長らがメキシコおよびスペインに滞在していた時期に、両地域ではすでにチョコレートが食されていました。このことから、常長らが「日本人で初めてチョコレートを食べた」という説があると考えられます。しかしながら、常長ら一行がチョコレートを味わったかどうかの記録は、全く残っていません。
また、当時のメキシコおよびスペインでは、チョコレートは飲み物として口にされていました。現在のような固形の食べるチョコレートが誕生するのは、19世紀半ばです。ですから、「日本人で初めてチョコレートを飲んだ」という表現が正しいのかもしれませんね。
常長は、現在の柴田郡川崎町支倉地区の出身です。
その川崎町に、常長をモチーフにした、ゆるキャラがいるのをご存じでしょうか。
その名も、「チョコえもん」。同町の観光PRキャラクターです。最近では、ミヤギテレビの情報番組『OH!バンデス』の人気コーナー「TAXIめし リターンズ」で、あの斉藤ブラザーズとも共演を果たしています。
「チョコえもん」というネーミングは、常長の本名「六右衛門(ろくえもん)」と、常長が日本人で初めて口にしたとされるチョコレートとをミックスさせたものです。「チョコえもん」が犬の“姿”をしているのは、常長の肖像画に犬が描かれているためです。ローマ教皇に謁見するためローマを訪れた際の姿をヨーロッパ人画家が描いたとされる、常長の肖像画「支倉常長像」には、つぶらな瞳の黒い犬が常長の足元にお座りしています。
ちなみに、「チョコえもん」の年齢は400歳以上だとか…
川崎町では、温泉から廃棄されるお湯の熱を利用したカカオ栽培に取り組んでいます。東北地方では初めてのカカオ生産の試みです。将来的には、育てたカカオを原料にしたチョコレートの商品化を目指しています。
常長ら一行が船でスペイン・バルセロナからイタリア・ジェノバに渡る途中、嵐のため一時寄港したフランスの港町サン・トロペでは、一行の鼻をかんでは捨てる絹のような和紙の鼻紙をめぐって、現地の人たちがこぞって注目、先を争って拾った、というエピソードが残っています。和紙の鼻紙は、フランス人には高級品に見えたようです。捨てられた鼻紙の中でも、最も貴重視されたのは常長のものだったそうです。
この時、一行の使っていた鼻紙の実物は、ヨーロッパ最古の図書館であるローマの「アンジェリカ図書館」に保管されています。
また、鼻紙に使われていた和紙は、白石地方(現在の宮城県南部)が産地の白石和紙だったといわれています。白石和紙は、江戸時代、仙台藩により、産業の振興策として生産が奨励されていました。
常長は、努力にもかかわらず、目的が達成されないまま、1613年(慶長18年)の出航から7年後の1620年(元和6年)にようやく帰ってきます。そのころ日本では、キリスト教の弾圧や鎖国政策により、常長ら一行が牡鹿を出航した時とは国内の情勢が一変していました。常長は、仙台に帰ってから1年足らずのうちに、51歳で病死したとされます(五野井隆史. 支倉常長. 吉川弘文館, 2003.)。
常長のお墓といわれるものは、宮城県内に3か所あります。「北山五山」の1つである「光明寺」、常長のふるさとである川崎町の「円福寺」、そして、ひそかに隠居していたと伝わる黒川郡大郷町の山地(「支倉常長メモリアルパーク」付近)です。
「北山五山」とは、仙台城下を守る鬼門封じや関門として築かれたとされる5つの寺院の総称。寺院が多く点在する北山丘陵の東端にある光明寺(仙台市青葉区青葉町)は、伊達家初代当主・朝宗(ともむね)公の夫人の菩提(ぼだい)寺です。常長のお墓の脇には、慶長遣欧使節の案内役を務めた宣教師ルイス・ソテロの碑があります。
使節が持ち帰った資料は、「慶長遣欧使節関係資料」として国宝に指定され、仙台市博物館に所蔵されています。支倉常長の偉業を知るうえで貴重な資料が今も仙台で大切に残されているのは、天国に旅立った常長にとっても、せめてもの救いではないでしょうか。
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