「オカメインコ」は、セキセイインコと並んで、ペットとして人気があります。その名前に「インコ」とついていますが、実は面白い秘密があります。なんと、分類上は「インコ」ではなく、「オウム」の仲間なのです。ちょっぴり驚きです。インコとオウム、分類上は非常に近い種類なのですが……。
そこで今回は、オカメインコの“素顔”をご紹介してから、インコとオウムの分類の歴史をひも解いていくことにします。
ペットショップなどで見かけるオカメインコの最大の特徴は、頬に鮮やかなオレンジ色のチークパッチがあること。耳の穴を覆う「耳羽(じう)」という羽毛が、顔の他の部位と比べて、際立つ色になったものです。これが、「おかめ」と呼ばれる女性の「面」をイメージさせることから、その名がつきました。オカメインコが日本に渡来したのは、明治時代です。オカメインコは、カラーバリエーションが豊富なこともあって、多くのファンに愛され続け、現在に至っています。
オカメインコは、「インコ」という名前がついていますが、実は、れっきとした「オウム」です。オウム科の中では、世界最小サイズの鳥です。オウム科の鳥は、インコ科の鳥とともに、インコ目に属しています。
一般に、生物は、小型のものから大型のものへと進化していきます。
このようなことから、オカメインコは、インコ科と分かれた当初(原初)のオウムの姿や性質をとどめているとも考えられています。
オカメインコがオウム科の鳥であるとする証拠は、いったい何なのでしょうか。
オカメインコをよく見てみますと、頭頂部に“とさか”のような羽が生えています。この羽は「冠羽(かんう)」と呼ばれ、オカメインコがオウムの仲間であることを示す、何よりの証拠です。というのも、冠羽は、オウム科の鳥にしか見られない、特別な羽であるからです。そのほかに、青や緑、紫の体色の個体がいないことも、オウムの特徴として表れています。
では、なぜ、オカメインコは、「オウム」ではなく、「インコ」に分類されてしまったのでしょうか。
ここからは、インコとオウムの現在までの分類について、お話ししていくことにしましょう。
平安時代までの日本の文学作品や日記などの文献に「オウム」と書かれた鳥は、そのほぼ全てがインコだったと考えられています。
それは、平安時代までの日本には、「インコ」という言葉がなかったからです。インコ、オウムの類いの鳥は全て、「おうむ(あふむ)」と呼ばれていました。
「おうむ返し」という言葉は、平安時代に誕生しました。元々は、他人のいいかけた和歌を一部だけ変えて、すぐさま返答の歌(返歌)とする、という和歌の手法のひとつでした。清少納言(生没年未詳)は『枕草子』の中で、「外国の鳥であるオウムは、人の言葉をまねるそうですね」と書いています。「おうむ返し」の由来は、オウムが人の言葉をそっくりまねすることからでした。
鳥の文化誌研究家としても数多くの著書を発表されている、作家・サイエンスライターの細川博昭氏によれば、「おうむ返し」の語源となった鳥は、インコ目の分布や、平安時代までのアジアでの人の手による鳥類の移動などを総合的に考えると、ほぼ100%、インコだということです[同氏の近著『鳥を読む 文化鳥類学のススメ』(春秋社発行)を参照]。
こうして千年以上の時を経た今から考えますと、「鸚哥(いんこ)返し」が本来は正しいともいえそうですが、「鸚鵡(おうむ)返し」のほうが、語感がよく、しっくりくる気がしますね。
日本での「インコ」という名前は、鎌倉時代から呼ばれ始めたと考えられます。
『新古今和歌集』や『小倉百人一首』の編さん者としても知られる歌人・藤原定家(1162‐1241)がつづった日記『明月記』には、インコに関する記述が見られます。「色は青。嘴(くちばし)はタカのよう。柑子(こうじ。在来ミカンの一種)、栗、柿を食べ、人の名を呼ぶ」と定家が解説した鳥の名は、「鸚歌(カヒコ)」。これは、「インコ(鸚哥)」を意味していると考えられています。
鎌倉時代以後、日本では、「インコ」という呼び方が広がります。しかし、インコとオウムとが厳格に分けられることはなく、インコとオウムの2つの名前は、長期にわたって、混同して使われるようになっていきます。
江戸時代になると、大きいものは「オウム」、小さいものは「インコ」と呼ぶようになりました。『本草綱目』など当時の文献にも、「大なるものを鸚鵡(オウム)となし、小なるものを鸚哥(インコ)となす」といった記述が残っています。
その結果、オカメインコは、比較的小柄だったため、インコの仲間と見なされ、「インコ」と名づけられました(名づけられてしまいました。)。
こうした分類の仕方は、ひとつの指針として、明治時代以降の分類にも影響を与えました。
インコとオウムがはっきりと線引きされたのは、20世紀末になってからのことです。国際鳥類学会議により、インコ目の全ての鳥が、インコ科か、オウム科のいずれかに分類されるようになったのです。
インコ科の鳥は、南北アメリカ、アフリカ、アジアに至る広い地域に、300種以上が分布しています。これに対して、オウム科の鳥は、わずか20種ほどです。生息範囲は、フィリピン南部からニューギニアにかけての東南アジア島しょ部と、オーストラリア大陸、オセアニアのソロモン諸島などです。インコ科の仲間と比べて、狭い地域に集中しています。
しかし、オカメインコやモモイロインコなど、「インコ」という名前がつけられ、それが一般に定着してしまっている鳥は、一度つけられた名前をそう簡単には変更できません。「オウム」なのにもかかわらず、「インコ」。何とも不正確な分類は、現在も通用しています。このような両者の名前による「ねじれ現象」は、今後も続いていくことでしょう。
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〇 細川博昭. 鳥を読む : 文化鳥類学のススメ. 春秋社, 2023.
〇 細川博昭. オカメインコとともに : お迎えから日々の過ごし方、老鳥のケアまで。オカメインコの一生に寄り添うための手引き. グラフィック社, 2022.
〇 すずき莉萌 著, 三輪恭嗣 医療監修, 島森尚子 品種監修. オカメインコ完全飼育 : 飼い方から品種、健康管理、コミュニケーションまで. 増補改訂版, 誠文堂新光社, 2024.