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秋保温泉で400年以上燃え継がれる「聖火」

2024年03月04日

「聖火」と聞いて、何を思い浮かべるでしょうか。
多くの方が「オリンピック」と答えると思います。
実は、仙台の秋保温泉にも聖火があります。しかし、この聖火は、オリンピックとは何の関係もありません。では、どのような聖火なのか気になるところです。
そこで今回は、秋保温泉の旅館で燃え続けている聖火をご紹介します。

伊達政宗ゆかりの名湯 秋保温泉

仙台駅から車で30分ほどの場所、名取川が形成した河岸段丘上に位置する秋保温泉。同じ宮城県内にある鳴子温泉、福島県の飯坂温泉とともに、「奥州三名湯」に数えられる温泉です。

秋保温泉の歴史は古く、6世紀半ばの欽明(きんめい)天皇の時代まで、さかのぼります。欽明天皇が病を患った時に、勅使を遣わして秋保の湯をくみ取らせ湯あみしたところ、病がたちどころに完治したことから、「名取の御湯(みゆ)」と称されるようになったといいます。

秋保温泉を中世以来、代々管理してきたのが、秋保温泉を代表する老舗旅館「伝承千年の宿 佐勘」を営む佐藤家です。佐藤家は、平安時代末期に、平家の落人だった先祖が秋保の地に定着。家業として代々、温泉と森林や河川を管理してきました。江戸時代初頭には、佐藤家は、仙台藩から湯守(ゆもり)に任命されます。秋保で温泉を管理するとともに、入湯客のために宿屋を営業してきました。佐勘は、初代仙台藩主 伊達政宗も訪れ、その後、何代もの藩主が宿泊する由緒ある湯宿となりました。

秋保温泉は、佐勘に、江戸時代から明治時代に開業した3軒を加えた4軒の時代が長く続きました。1960年代後半以降は、大規模旅館の開業が相次ぎ、温泉地が急速に拡大しました。現在、秋保温泉には、十数軒の温泉施設があります。佐勘では、名取川を眼下に望む「河原の湯」など、風情あるお風呂でほっこりと湯あみが楽しめます。現在の社長は、佐藤家の34代目です。

火事を教訓に聖火を守り続ける

近世になって、佐勘は、火災により、屋敷と湯宿が全焼してしまいます。1593年(文禄2年)に再建できたものの、当時の佐勘当主だった佐藤勘三郎は大変責任を感じていました。そこで、勘三郎は、往復48日間をかけ紀州国(現在の和歌山県)の高野山に参って、二度と火災に遭わないように祈願します。その際、勘三郎は、高野山の奥之院にある「貧女の一灯」から火縄に移して火を持ち帰りました。高野山から預かってきた火を、佐勘では「家宝の聖火」として1日も絶やすことなく守り続けています。その聖火は今も、館内の主屋(おもや)と呼ばれるスペースの囲炉裏で燃え続けています。その様子や雰囲気に触れたとき、佐勘の歴史を肌で感じ取れるのではないでしょうか。主屋には、伊達家ゆかりの貴重な品々も展示されています。

聖火の火の番は、フロント係が兼ねているそうです。2011年に東日本大震災が起こった時、心配したフロント係が真っ先に駆けつけましたが、聖火は無事でした。

火による災難に遭ったのに、火を炭に移して燃やし続けている。「災いを転じて福となす」という意味があるのでは? そう思いたくもなります。

聖火は現在まで、佐勘の歴史と共に、脈々と受け継がれています。

あの聖火を照らすのは…。新しいものを拒まないスピリット

聖火が燃え続ける囲炉裏を照らす照明設備は、仙台を代表する企業の一つであるアイリスオーヤマによるLED電球です。佐勘では、照明のLED化を積極的に進めています。囲炉裏上方の照明のシェードは、使われなくなった火鉢を再利用したものだそうです。斬新ですね。そこには、「新しい技術を取り入れながらも、古き良きものを未来に伝える」という佐勘の柔軟な考え方が表れています。老舗旅館でありながら、古き良きものをかたくなに守るのではなく、新しいものや変化を拒まない。佐勘は今日も、元気にお客さまを迎え入れています。

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